【ももプリの皮膚TPE(エラストマ―)とは】
「お迎え準備」の記事にも書きましたが、ももプリの構造は金属骨格+TPE(エラストマ―)の皮膚という構造になっています。皮膚のTPEはドールの素材としては最も新しく、従来のシリコンよりも柔らかく柔軟性があり、触り心地も非常に良いという特徴があります。柔らかく感じる成分はざっくり言うと「オイル成分」です。ドールメーカーによってTPEの配合比は違い、私達でもすぐにわかるのが触ったときの柔らかさ。柔らかければ柔らかいほどオイル成分が多いということになります。
そしてこのオイル成分はほんの微量ですが皮膚の外に染み出してきます。これは「ブリード現象」と呼ばれています。どのメーカーのドールでも必ず起こり、もっと詳しく言うとTPEドールでもシリコンドールでもブリードは起こります。しっとり柔らかい成分が外に染み出してしまうと経年により皮膚はカサカサしてきてひび割れや裂けなどが起こり始めるのですが、ドールがどのような環境下にあったかで劣化具合に大きな差が出てきます。今回はドールをできるだけ長くきれいに、劣化を防ぎながら保管する方法をご紹介します。
【夏はエアコンの効いたお部屋で保管を】
ももプリの皮膚であるTPEは、熱に弱いという特徴があります。熱で溶かしたものを金型に流して作りますので、再度加熱された場合ドロドロになったりはしませんが重力に負けて皮膚が下に落ちてしまうことはよくあります。弊社のサンプルドールたちの保管部屋は、夏場には必ず24時間エアコンを稼働させています。もちろん直射日光もNG。エアコンの温度は人が暑いと感じる28度でじゅうぶんです。タイマー機能などを上手に使ってあまり高温になりすぎないように注意してください。旅行などで数日家をあけた期間がたまたま熱帯夜だったりすると、ドールの肌の奥のほうまで熱をもってしまい重度の変形が起こりやすくもなります。キンキンに冷やす必要はありませんが、熱を持つ状態が長く続かないようにするのが理想です。
この温度管理はドールが経年劣化したときに前述の「ブリード」による皮膚の劣化に大きな違いを生みます。熱を持つとブリードが起こりやすくなり、皮膚が乾燥してくるのも当然早くなるためです。保管に最も大切なのがコレですので知識として覚えておきましょう。
※保管状態が良好な場合でもブリードは必ず起こります。お肌がぺたぺたしてきたなと思ったらたっぷりとベビーパウダーをはたいてサラサラなお肌をキープしましょう。【TPE&シリコン】お肌しっとりクリーナーを使えば洗浄とうるおいキープがいっぺんにできて便利です。
【保管に適した姿勢=箱に入っていたときの姿勢】
もももプリは自立パーツ付がデフォルトなので、立たせて保管するのがメーカーも推奨する保管方法です。寝かせたり座らせたりして保管することもできますが、共通しているのは「関節をまっすぐにした状態」にするということです。椅子などに座らせて保管すると一部の皮膚がひっぱられたり折りたたまれたりしますので、そのまま長期間放置することはおすすめできません。もしどうしても座らせる場合は、できるだけ緩い角度で関節をやんわり曲げる程度にして皮膚への負担を少なくなるようにしてください。
【ドールスタンドを使う場合】
【ドールスタンドを使わない場合】
まず、うっかり動かしたときにフローリングや畳を傷つけることがありますので靴やルームシューズをはかせてください。靴のサイズは全ボディ共通で18.5~19㎝です。自然に直立させた状態で、壁や大きな家具などに体重が少しかかるように斜めにしてください。そのままだと壁や家具の跡がついてしまうので、ボディとの間にクッションを挟んでください。
【寝かせてor座らせて保管】
繊維に触れることで色移りやホコリがついたりもしますのであまりおすすめしませんが、どうしても寝かせるまたは座らせて保管する場合は、関節をできるだけ曲げないように、お尻がつぶれてしまわないように低反発のクッションを使って対策してください。
【色移り対策】
基本的に濃い色のお洋服やウィッグは肌への色移りが起こる可能性があります。うっすら色がついたくらいでしたら目立たなくすることもできますが、濃いシミのようなものは専用の除去クリームなどを使わないと落とすことができません。撮影など短時間ならあまり気にする必要はないですが、半日くらいで色移りが起こる場合もあります。できれば濃い色の繊維が肌に直接触れないようにするのがよいのですがそれもなかなか難しい…ボディストッキングで皮膚と布の間にワンクッション置くことで多少安心感は出ますが、それでもどうしても触れてしまう部分は出てくると思いますし、コスプレさせてキャラクターに限りなく似せたい場合などは服の色やデザインが決まってしまうことになるため対策が難しいことも多いです。そういった場合には、遊び終わったら服は脱がせて、保管用に白っぽい服と薄い色のウィッグを用意してあげるのがおすすめです。ももプリはオール美少女なので似合わない服やウィッグは存在しません!自分の家でくつろぐ用の部屋着を着せてあげる感覚で楽しんでコーディネートしてみてはいかがでしょうか?画像はほいっぷのキャラクターデザインをしていただいた方のお家のドールの普段着です。
【色移りはなぜ起こるのか】
そもそもTPEへの色移りはどのようにして起こるのでしょうか?布地の色は繊維用の「染料」が使われているのですが、どうやらTPEのオイル成分とその染料の相性が非常に良い…ということが考えられます。綿などナチュラルな素材に使う染料とポリエステルやレーヨンなどに使う染料は違うものなのですが、これまでサンプルドールにいろいろお洋服を着せた経験から言うと、綿素材のものよりも化学繊維のほうがTPEへの色移りが起こりやすい気がしています。これはあくまで個人的観測なので根拠はありませんが…布に色を定着させるための「色止め」の処理が甘い布や、染料の半分くらいは定着しないことを前提に染められているなど、おそらく化学繊維を染める工程によっても色移りしやすい布というのが出てきてしまうのだと思います。ただそういった工程は布として仕上がってしまえば見た目ではまったく違いはわかりません。基準があるとすれば、例えば駅ビルに店舗のある有名なファッションブランドの服は布選びもしっかりされています。対してオール海外製のノーブランドの服は、見た目は良くても布のチョイスが適当で、色移り具合がまったくかわいげがなかったりします。そのくらいの違いがありますが、ファストファッションってとても魅力的なので…色移りしやすくてもどうしても手が出てしまいますよね。ノーブランド品を買うときは色のあまり濃くない服を選ぶようにするといいかもしれません。
【以外な盲点、跡残り】
ソックスの一番上のゴム部分、ストッキングもマチ部分(股間部分)、下着のゴム部分、お洋服のゴム部分など、肌の一部を強く圧迫するお洋服や小物にはご注意ください。熱が加わらなくても圧迫されて跡が残ってしまいます。人間みたいに時間が経つと消え…ません。くっきりついた跡はもう元に戻すことはできないので、跡をつけないように注意しましょう。以外と盲点なのがスカートをはいたまま座らせて放置してしまった場合。どうなるでしょう?なんとスカートをお尻に敷いたときの布地の皺が、お尻にくっきりついてしまいます…!跡残りも色移りと同じく見た目がかわいそうになってしまうので気を付けましょう。「立たせて保管が望ましい」というのはこういう理由もあります。
【シャワーなどで洗浄するときの注意点】
シャワー温度
お湯にする場合「ぬるま湯」程度にしてください。人間が浴びるシャワーの温度は熱すぎます。水で十分ですがぬるま湯のほうが洗浄しやすいことはあると思います。TPEは熱に弱いのでくれぐれも温度を上げすぎないよう注意しましょう。
足にカバーをかける
ももプリは自立パーツ付が標準モデルのため、骨格とつながったボルトが3本ずつ足裏を突き抜けて露出しています。骨格とつながっているため当然水をかけると中の骨格に浸透します。骨格は金属製のため水濡れは厳禁。もしお風呂などで大量の水をかけて洗浄したい場合は、足にカバーをかけるなどして濡れないように対策をしてあげてください。もし濡れてしまったら、中のほうは完全に乾燥させるのは難しいかもしれませんが、キッチンペーパーを使ってできる限り水分を拭き取り、ドライヤーの冷風(温風はNGです)で乾かしてください。個体差もありますが、足裏のボルトはネジ式になっているため回すことができれば外せます。が、皮膚の穴と位置がずれてしまうとはめ直すことができなくなることがあるため、ボルトを外すのはおすすめしておりません。前述のとおり国内で修理できるところがないため、どうしても外す場合はお客様の自己責任で、ということになります。
ヘッドを外す
ももプリはヘッドとボディが別々になった状態で届きます。いちどはめたヘッドはもちろん外すことができますので、ヘッドは外してボディだけを洗うようにしてください。両方洗いたい場合はヘッドはヘッド、ボディはボディで洗ったほうが安全です。ヘッドを外すと首の金属が露出しますので、濡れないように注意してください。
メイク部分を洗いたいときは…
ももプリのメイクは従来のTPEメイクに比べて落ちにくい、色褪せもしにくいという特徴はありますが、強くこすれば落ちますし劣化も少しずつ進んでいきます。お家で着せ替えなどして遊ぶ程度であれば洗う必要はありません。もしお顔の一部に汚れがついてしまったら、まずベビーパウダーを多めにはたいてその後少しずつメイク用のハケでパウダーを落としてみましょう。汚れがついたばかりならばそれで目立たなくなることもあります。ももプリのメイクは技法も塗料も社外秘とされているため弊社にも秘密にされており、不自然に落ちてしまうと直し方のアドバイスもできなくなってしまいます。洗うようなことにならないように、女の子の顔は大事にしてあげましょう。
純正アイは水濡れ厳禁です
ももプリ本体に付属するアイは、印刷した紙にガラスカボションをかぶせてある状態です。裏面は紙が露出した状態のため、もちろん水濡れは厳禁。どうしてもヘッドを洗いたい場合は必ずアイを外してください。お風呂場で撮影する場合も湿気でダメになる場合がありますので注意が必要です。対策として、本体が届いたら早めにアイの裏面を保護してあげるとよいです。防水効果のある「ダクトテープ」で裏面の紙をすべて覆うなど、濡れても大丈夫な一工夫をしてあげると安心です。
【骨折、裂傷などが起こってしまったら…】
TPEの補修は、再度熱を加えながら追加のTPEを埋め込んでいくことで応急処置的には可能ですが、元のとおりのなめらかな状態に戻すことは不可能です。製造メーカーが中国のため、現在のところ修理をお受けすることができません。骨格の骨折についても同様です。メーカーはよりよい商品をお客様にお届けするべく日々改良や開発を行っておりますので、不具合が出てしまった場合にはお気軽にお問い合わせよりご相談ください。軽度なものでしたらお客様自身で対応できる場合もございます。いただいた件はすべてメーカーへも共有して改善につとめてまいります。
こちらの記事も随時更新していきます。はじめて読むと「なんだかめんどくさそうだなぁ…」と思うかもしれませんが、覚えてしまえばたいしたことありません。コツを覚えて楽しいドールライフをはじめましょう!